哲学生の記録。

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2019-01-01から1年間の記事一覧

【西洋文化史概説】アウトサイダーのスティグマ ―なぜ彼らは迫害されたのか―

0.はじめに 中世ヨーロッパでは、魔女や異端者として、非合理的に迫害された人たちがいた。しかし彼らが迫害されたのには、当時としては正当だと思われた理由があったのであり、そこにはなんらかの社会的、もしくは民衆心理的な動機があったに違いない。そ…

【西洋文化史概説】ミシェル・フーコー『狂気の歴史』の概要と書評

≪選択テーマ≫ 文化史の発展、あるいはそれに貢献した諸研究の書評。 ≪書名≫ ミシェル・フーコー著、田村俶訳、『狂気の歴史―古典主義時代における』新潮社、1975年。 ≪概要と構成≫ 1.『狂気の歴史』とは何か 『狂気の歴史』の主張とフーコーがこれを著した…

【東洋美術史】北宋と南宋の山水画

1.北宋の山水画 〜大地を正面から描く〜 北宋と南宋の山水画を比較すると、北宋の山水画には山や大地が主題として描かれていると言える。そしてその特徴は、正面性の強い構図だ。たとえば范寛の「谿山行旅図」では、かなり存在感を持った山が画面の中央に…

【東洋美術史】范寛の「谿山行旅図」について

范寛の「谿山行旅図」についてレポートする。この作品は北宋時代のもので、絹本墨画淡彩である。大きさは、縦206.3cm、横103.3cmと、なかなか大きい。 1.モチーフ まずぱっと見て何ともインパクトがあるのが、画面中央に堂々と描かれている重量感のある岩…

【臨床心理学実習】ロールシャッハレポート

テスト参加者は、22歳の大学生(女性)R.N.であった。検査者は21歳の大学生(女性)であり、テスト参加者との関係は、大学の学生寮で同じ階に住んでいる友人である。 反応総数Rは30なので、被験者は比較的検査に協力的で関心を持ち、検査者に対してあまり防…

【博物館実習】柳宗悦・民藝の美

1.民藝の性質・実用的で普通品 柳宗悦は、民衆的な工藝という意味で「民藝」という言葉をつくった。それは一般の人々が日常生活の中で使う器の中に美を見出すという思想だった。民藝の性質として柳は、実用的であることと普通品であることの二つを挙げてい…

【心理実験】記憶 ―自動再生法による系列位置効果―

目的 自由再生法の課題において、単語の呈示順序と再生率の関係を明らかにする。自由再生とは、相互に無関連な単語リストを覚え、できるだけ多くの単語を、単語の呈示順序に関係なく、思い出したものから順に再生することである。記憶には、呈示されたリスト…

【心理実験】対人行動  ―パーソナル・スペース―

目的 パーソナル・スペース(個人空間)とは、人間の身体のまわりをとりまく、見えない境界を持つ他人に侵入されたくない領域のことである。これは、我々はあまり他者と接近しすぎると不快や不安が高まり、他者を避けたり、他者との間にある程度の距離をとろ…

【心理実験】鏡映描写課題による両側性転移の検討

序論 タイプライターを打つ場合や自動車を運転する場合など、目、指、腕、脚など身体各部分の運動が一つのまとまりをもったものを運動技能と呼ぶ。したがって運動技能とは、感覚系と運動系との状況に即した密接な協応を必要とする行動であり、この協応関係が…

【哲学基礎演習】ソクラテスが死を恐れない理由

p.28(三) 哲学者は死を恐れない。死とは魂と肉体の分離であり、哲学者は魂そのものになること、すなわち、死ぬことの練習をしている者であるのだから 哲学者は死に臨んで恐れを抱くことなく、あの世で最大の善を得る希望に燃える。 哲学者は死ぬことと死ん…

【哲学基礎演習】『方法序説』第二部 デカルトが探求した方法の主たる規則

「たくさんの部品を寄せ集めて作り、いろいろな親方の手を通ってきた作品は、多くの場合、一人だけで苦労して作り上げた作品ほどの完成度が見られない」(p.20) 例) 一人の建築家が請け負って作りあげた建物と、古い壁を生かしながら修復につとめた建物 村…

【哲学基礎演習】ティム・クレイン『心は機械で作れるか』のまとめ

第1章「心はどのようにしてものを表象できるのか」 心的表象、あるものが別のものを表象するとはどういうことなのか。 中世・ルネサンス「生物的世界像」 ↓ 17C科学革命「機械的世界像」 ものが様々なふるまいをするのは、各々のものが自然法則にしたがって…

【哲学基礎演習】エラスムスの紹介

1.エラスムスとは まず、エラスムスというのがどのような人であったかというと、ルターはエラスムスのことを「彼はうなぎのような人間で、キリスト以外に彼をつかまえられる者はいない」と評しています。とらえ難い人であったようです。 彼は司祭の資格を…

【哲学基礎演習】上田閑照『私とは何か』の要旨と感想

1.自我の自意識から自覚への転換には、一種の目覚めを誘発する衝撃がある まず「自覚と自意識」の節について要旨をまとめる。 「我は我なり」と言いつつ「我」が開かれる場合の「我」を自己、「我」が閉ざされる場合の「我」を自我と呼ぶことにした。自己…

【哲学基礎演習】神と言葉について

1.ヨハネ福音書1章1節「初めに言があった」 講義資料より、新約聖書の「ヨハネ福音書」1章1節には「初めに言があった。言は神と共にあった。言は神であった。この言は、初めに神と共にあった。万物は言によって成った。成ったもので、言によらずに成ったも…