【哲学基礎演習】『方法序説』第二部 デカルトが探求した方法の主たる規則
「たくさんの部品を寄せ集めて作り、いろいろな親方の手を通ってきた作品は、多くの場合、一人だけで苦労して作り上げた作品ほどの完成度が見られない」(p.20)
例)
一人の建築家が請け負って作りあげた建物と、古い壁を生かしながら修復につとめた建物
村落が大都市に発展していった古い町と、一人の技師が設計した城塞都市
少しずつ不都合に迫られてつくられた法律と、一人の賢明な立法者の定めた基本法
「書物の学問、少なくともその論拠が蓋然的なだけで何の証拠もなく、多くの異なった人びとの意見が寄せ集められて、しだいにかさを増やしてきたような学問は、一人の良識ある人間が目の前にあることについて自然になしうる単純な推論ほどには、真理に接近できない」
→「われわれの判断力が、生まれた瞬間から理性を完全に働かせ、理性のみによって導かれていた場合ほどに純粋で堅固なものであることは不可能に近い」(p.22)
「わたしがその時までに受け入れ信じてきた諸見解すべてにたいしては、自分の信念から一度きっぱりと取り除いてみることが最善だ」
後になって、ほかのもっとよい見解を改めて取り入れ、前と同じものでも理性の基準に照らして正しくしてから取り入れるため。
→このやり方によって、はるかによく自分の生を導いていくことに成功する。
「わたしの計画は、自分の思想を改革しようと努め、わたしだけのものである土地に建設することであり、それより先に広がったことは一度もない」(p.24)
しかしこの計画だけでも、多くの人にとっては大胆すぎるかもしれない。
世の中の二種の精神
- 自分を実際以上に有能だと信じて性急に自分の判断をくださずにはいられず、自分の思考すべてを秩序だてて導いていくだけの忍耐心を持ち得ない人たち。
- 真と偽とを区別する能力が他人より劣っていて、自分たちはその人に教えてもらえると判断するだけの理性と慎ましさがあり、もっとすぐれた意見を自らは探求しないで、むしろ、そうした他人の意見に従うことで満足してしまう人たち。
↓
かつて信じて受け入れたことをすべて捨て去る決意をするに適さない。
デカルトは、「他の人よりもこの人の意見を採るべきだと思われる人を選び出すことができずに、自分で自分を導いていかざるをえないことになった」(p.26)
論理学と幾何学の解析と代数
↓
四つの規則
- わたしが明証的に真であると認めるのでなければ、どんなことも真として受け入れないこと。
- わたしが検討する難問の一つ一つを、できるだけ多くの、しかも問題をよりよく解くために必要なだけの小部分に分割すること。
- わたしの思考を順序に従って導くこと。そこでは、もっとも単純でもっとも認識しやすいものからはじめて、少しずつ、階段を昇るようにして、もっとも複雑なものの認識にまで昇っていき、自然のままでは互いに前後の順序がつかないものの間にさえも順序を想定して進むこと。
- すべての場合に、完全な枚挙と全体にわたる見直しをして、なにも見落とさなかったと確信すること。
この方法によって、自分の理性を最もよく用いることができ、自分の精神が対象をいっそう明瞭かつ判明に把握する習慣をつける。
ほかの「学問の原理はすべて哲学から借りるものであるはずなのに、わたしは哲学ではまだ何も確実な原理を見いだしていないことに気がつき、何よりもまず、哲学において原理を打ち立てることに努めるべきだと考えた」(p.32)
- 作者: デカルト,Ren´e Descartes,谷川多佳子
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