哲学生の記録。

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【倫理学】環境問題(人間と自然をどう考えるか)

1.人間と自然を対立するものと考えることが、環境問題を引き起こす

現在地球上で人間の手によって引き起こされている環境問題は、その原因が人間の日々のライフスタイルにあると思われる。すなわち、資源があればあるだけ使うという暮らし方や、自然の中に存在する人間以外の生命や自然環境そのものを、まるで人間によってだけ利用されるためのもの、つまり人間の所有物であるかのように扱うことが、環境汚染を引き起こし、地球全体の生態系を破壊しているのだ。

このような環境問題を引き起こすライフスタイルは、自然を人間とは別のところに独立して存在しているものであるかのようにとらえる考え方に基づいて成り立っている。人間と自然を対立するものとしてとらえて考えることは、西洋における科学の進歩には欠かせないものだった。しかし、本来は人間も地球上の生態系の一構成員であり、自然の一部であるはずであるのに、自らも自然の一構成員に過ぎない人間が、自然全体を自分の所有物であるかのようにとらえ扱うことが許されるのだろうか。許されるはずがない。その結果として現在、環境問題が起こってきている。人間は自分とは異なったところにあるものであるつもりの自然環境を破壊し、その結果として破壊された環境の中で住めなくなりそうな自分を発見し、ようやく自分も自然の中で生きている自然の一部であったことに気がついたのである。

 

2.自然の中で一構成員にすぎない存在である人間を意識すること

では、地球環境問題を解決するためにどうすればいいのかといえば、これまで環境問題を引き起こしてきたライフスタイルを改善するために、そのライフスタイルのよりどころであった自然観を見直すことから始める必要があるだろう。つまり、自然を人間の自由にできる所有物であると考えることをやめて、自然の中で一構成員にすぎない存在である人間を意識することが大切である。人間が自然の一構成員であることが意識されれば、人間は自分が生き延びることには地球全体を守ることが不可欠であることに気づけるはずだ。

ただ、ここで問題になってくるのは、人の考え方を変革させるのは非常に難しいことであるうえに、このように考えて人間以外の地球上の生命を人間と対等の命の権利を持った存在として扱うことがどんなに倫理的に考えて正しいことであったとしても、道徳感情は個々の人間の行動の決定に関して絶対的な強制力は持っていないということだ。理想としては、自然に対して共感を持ち、自分の吟味した道徳にしたがった行動をすべての人間が取ることであるが、それが無理であるのなら、純粋な道徳感情に基づいた強制力を持つ規則の制定が望まれる。