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【発達と学習の心理学】学校への携帯電話持ち込みについて

1.非常時に備え、持ち込みは許可

私は児童が学校へ携帯電話を持ち込むことに関して、持ち込みは許可すべきであるが、非常時以外は登下校中や校舎内では電源を切っておくよう義務付けるのが良いと考える。

なぜ持ち込みを許可すべきかというと、それは携帯電話を持つことによるメリットを考慮してのことである。たとえば登下校中に不慮の事態が起こった場合、児童が携帯電話を持っていればそれが民家の少ない道であっても親・警察・消防などに連絡ができる。地震などの災害時にも役に立つだろう。

 

2.パーソナリティの成熟・社会的コンピテンスの獲得のため、日常的使用は禁止

そして、非常時以外は登下校中や校舎内では電源を切っておくよう義務付けることで、携帯電話を学校へ持ち込む際に生じると考えられる難点も解消することができる。もしも学校内での携帯電話の使用が日常的なものとなったら、児童の精神的な発達過程は大きな影響を受けるだろう。授業中にメールのやり取りをしたりゲームで遊ぶのはもちろん禁止するが、休み時間に教室にいながら電話やメールをすることは、パーソナリティの成熟や社会的コンピテンスの獲得を難しくすると考えられる。成熟したパーソナリティはオールポートによると、自己意識の拡大、他者との温かい関係、情緒安定性、現実的な知覚と技術、自己客観視、統一的人生哲学という特徴を備えたものだが、電話やメールという手段で遠くにいる人ともコミュニケーションが図れる携帯電話の使用は、逆に物理的にすぐそばにいる人とにコミュニケーションを試みる機会を減らしてしまう。パーソナリティは、気質を基礎として乳児期、児童期と周囲の環境的な影響のもとに形成されていき、個人差もあるが青年期以降はあまり変化しないという見解が有力である。パーソナリティを形成する年齢である学校に通う児童にとって、実際にクラスメートなどの目の前にいる人間とのコミュニケーションは非常に重要だ。

また、生体がその環境と効果的に相互交渉する能力である社会的コンピテンスの獲得には、自己並びに他者、社会の事象について適切に理解する力の発達が必要であり、環境に変化や効果を生み出せた時に感じる効力感が必要である。メールは話すのが苦手な児童にとっては自己表現の動機を満たすために一役買うこともあるが、それでもやはり面と向かって直接相手からの反応を見られた方が社会的コンピテンスにつながるだろう。向社会的行動の発達の前提となる社会的コンピテンスは、社会に出る準備段階である学校で身につけておきたいものだ。児童期というのは、人生で最も仲間関係の発達する期間である。そのような時期にかけがえのない現実的な仲間とのコミュニケーションを変容させる携帯電話の使用は、少なくとも学校の管轄内では禁止すべきだ。