哲学生の記録。

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【倫理学概論】

【倫理学概論】ケアの責任自体が生の享受であれ

1、自律的に生きること 工藤は、閉じた共同体内のあらかじめ定まっている道徳に従うことを他律として、自らが倫理的であろうと批判的に判断することを自律とする。そして「啓蒙の時代である近代に求められる理性の公共的使用は、共同体から一旦離れて考えて…

【倫理学概論】脳死からの臓器移植

1.どの状態を死とするか 人が生きている、死んでいるとはどのような状態なのか。一般に、生は死と相対するものとして考えられるが、実際には死の瞬間と言える一点はない。それは、完全な身体の機能停止に向かって徐々に進行していく不可逆的な現象であり、…

【倫理学概論】対話でつくる国際正義

1.不可欠、だが困難な、国際正義の定立 「グローバル化により異なった文化的背景をもつ人間の接触機会が増大したいま、文化横断的な正義や地球的な共存倫理を定立することなしに、他者との良好な関係を維持することは不可能なのである」(1)と、押村高は…

【倫理学概論】マジョリティの道徳的悪(中島義道『悪について』より)

1.カント倫理学は適法行為のうちで道徳的に善い行為を問題とするが、人間は非適法行為を実現する 中島義道は、カント倫理学のなかで、適法的ではあるが道徳的に善くはない領域の「悪」についての言及に注目する。中島によれば「カントの関心は、義務に適っ…